梅小路公園水族館計画の経過と問題点(2010年9月30日)

はじめにー発端はオリックス不動産の働きかけ
 京都市下京区の梅小路公園に、オリックス不動産が水族館を建設するという計画が市民の前にはじめて明らかにされたのは、'08年7月でした。
 しかし、実際に、オリックス不動産が水族館建設の構想を示して、京都市に働きかけを始めたのは、'05年12月のことであり、約2年半にわたって、京都市とオリックス不動産は水族館建設に向けて、市民に知らせないまま水面下で協議を続けてきたのです。
 '08年7月、この計画が発表されると、京都市長は、いち早く、「第三者機関、市民などの意見を聞き、方針を決めたい」として、「検討委員会」を設置するとともに、市民意見を公募しました。'08年12月、「検討委員会」が水族館建設を妥当する答申を提出したことから、一気にこの計画の実現に向けて動き出しました。
 しかし、京都市の公募した市民意見では、その7割が、環境負荷の増大や古都京都にふさわしくないと反対していることが明らかになっています。
 今回の水族館計画は学習教養施設とされているものの、年間200万人もの入場者を予定した国内最大級の内陸型水族館であり、その実態はイルカショーをメインとした大規模集客をめざした商業的色彩の強い営利施設にほかなりません。
今回の計画の問題点
 今回の計画の問題点の第1は、「いのちの森」として市民に親しまれ、広域避難場所にも指定されている梅小路公園の機能が、オリックス不動産という営利企業の商業的施設建設によって大きく損なわれることです。
 問題点の第2は、CO2の新たな排出源の建設による環境負荷の増大です。京都議定書誕生の地であり、「環境モデル都市」にも選定され、CO2のためにコンビニ規制も検討してきた京都市が、年間5000トン以上ものCO2を排出する水族館の設置を認めることは温暖化防止に逆行するものです。
 問題点の第3は、イルカショーなどによる水族館の集客は、生物多様性の破壊を招くことです。イルカなどの海洋ほ乳類は繁殖力が低く、また水族館飼育下のイルカの寿命は自然界の3分の1程度であることから、イギリスなどでは水族館でのイルカ展示はすでに中止されています。2010年10月には、名古屋市で生物多様性条約の第10回締約国会議が開催されますが、今回の水族館計画は生物多様性保護に逆行するものとして、国際的批判をあびることになります。
 問題点の第4は、年間200万人もの入場者を予定していることから、公園周辺の交通渋滞やイルカショーなどの騒音による地域の平穏な生活環境の破壊が懸念されることです。
 問題点の第5は、上述したとおり本件水族館の設置により、大量の自動車交通が集中することによる大気汚染やイルカショーなどの騒音により、地域の平穏で良好な環境の破壊が懸念されるにもかかわらず、水族館が完成して営業を開始した場合に、周辺の環境にどのような影響を及ぼすかについて、環境影響評価手続にもとづく予測と評価がなされていないことです。
 以上述べたように、今回の水族館計画にはさまざまな問題点があることが明らかになっており、多くの市民から反対の声があがっています。

京都市による設置許可の強行
 今回の水族館計画には、上に述べたとおり、さまざまな問題点があることから、市民から京都市とオリックス不動産に対して、市民の疑問にこたえるために説明会を開催して、説明責任を果たすよう求める声があがりました。
 こうした声におされて、'10年1月30日、ようやくオリックス不動産が第1回の説明会を開催したのをはじめ、'10年3月22日と4月25日には京都市とオリックス不動産の共同説明会が開催されましたが、いずれも市民から質問が次々と出されるなかで、十分な回答がなされないままに予定した時間が経過したということで、説明会が打ち切られました。
 また、'10年2月7日には200人以上の市民の手で、建設予定地を取り囲む人間の鎖がつくられたのをはじめ、4月25日には、京大会館で市民による水族館問題を考える公開シンポジウムが開催されるなど、"梅小路公園に水族館はいらない"という市民の運動もまた力強く展開されてきました。
 しかし、京都市は、こうした市民の声や運動の広がりを無視して、'10年5月14日、オリックス不動産から申請されていた、梅小路公園での水族館の設置許可を強行しました。これに対して、私たちは直ちに抗議行動に取り組むとともに、京都市長に対して、水族館設置許可の取り消しを求めて、都市公園法にもとづく異議の申立に取り組み、6月22日には、市民351人が京都市長宛に異議申立書を提出しました。
 さらに6月28日、京都弁護士会が水族館設置許可の再検討を求める意見書を提出しました。また、9月14日には、周辺住民ら141人が京都市建築審査会に、京都市が7月16日に行った水族館の建築確認について、その取り消しを求める審査請求を行いました。こうした住民のねばり強い運動のなかで、京都市は、8月下旬、当初予定していた梅小路公園の7条入口広場に水族館の来客駐車場を建設する計画を断念するに至りました。
 以上のように、梅小路公園に水族館はいらないという市民の運動は、京都市長による設置許可の強行という新しい事態のもとでも、いささかもひるむことなく力強く前進しています。一人でも多くの市民の皆さんが、この運動をさらに大きく発展させるために、ともに力を合わせて下さることを心から訴えるものです。

今回の水族館問題の経過

05年12月 オリックス不動産、京都市に水族館建設の意向を提示
07年2月 当時の門川教育長、新江ノ島水族館を視察
08年1月 門川市長候補、マニフェストに「体験型の大型集客観光施設を誘致」を掲げる。
08年7月14日 オリックス不動産、水族館整備構想の提案発表
08年12月12日 「まちづくり市民会議」、水族館問題に関する公開質問書提出(09年1月28日 京都市の回答書)
08年12月24日 第三者委員会(「構想検討委員会」森本幸裕委員長)、条件付で「設置は妥当」との答申
09年2月18日 「いきもの多様性研究所」など、環境団体が連名で、梅小路公園地区の活用に関する提案書提出
09年2月23日 JR西日本、梅小路公園に鉄道博物館新設計画を発表
09年3月5日 まちづくり市民会議などが鉄道博物館新設計画に関して、公開質問書提出(3月30日、京都市の回答書)
09年7月29日 「まちづくり条例」にもとづく説明会(梅小路小学校400人以上の市民が参加)
09年8月10日 市民からの意見書187通
09年9月3日 検討委員会の委員6人に対する公開質問書提出(9月14日森本氏から回答書)
09年12月9日 事業者から見解書提出
09年12月11日 市民ネットワーク結成集会
10年2月7日 梅小路しぜんフェスタ、人間の鎖
10年3月9日 市民ネットワークなど、京都弁護士会に水族館建設に関する調査要請
10年3月18日 「梅小路公園の未来を考える会」による水族館に替わる対案の提出
10年3月22日 京都市・オリックス不動産による説明会(第1回)
10年4月25日 京都市・オリックス不動産による第2回説明会
10年5月14日 京都市、梅小路公園に水族館設置許可
10年6月22日 市民351人が許可の取り消しを求めて異議申立書を提出
10年6月28日 京都弁護士会、水族館問題の再検討を求める意見書提出
10年7月16日 京都市、オリックス不動産に水族館の建築確認済証を交付
10年8月26日 京都市、梅小路公園7条入口広場に予定していた来客駐車場計画断念
10年9月14日 周辺住民141人が建築確認の取り消しを求める審査請求を京都市建築審査会に提出