国鉄闘争の和解の意義と今後の課題

荒川 英幸

最高裁での和解とその意義

 23年間にわたったJR採用差別事件が、2010年6月、最高裁での一括和解により政治解決した。和解金額は組合員1人あたり2200万円であり、それまでの訴訟の認容最高額だった550万円(全動労事件の東京地裁判決)を大きく上回るものである。また、闘争団・原告団、組合、支援組織の4者・4団体に合計58億円の団体加算金を認定させたことの意義も大きい(同認定は、1980年代以来とされる)。
 国家的不当労働行為に反撃し、長年の苦難に耐えた当事者、家族、組合の不屈の闘いに心からの敬意を表したい。国鉄「分割・民営化」は、国労・全動労を解体して戦後労働運動を終焉させ、労働者を無権利状態に置くという中曽根戦略によって展開された未曾有の組織破壊攻撃であり、凄まじい差別と人権侵害であった。その策動を打ち砕いて、JRという基幹産業の中に闘う労働組合が存続し、組合員が鉄道本来業務に従事していることは、戦後労働運動史の中でも特筆されるべき成果である。あわせて、闘争団・争議団の組織的自活体制、救援基金を含む全国的かつ重層的な支援体制、9次にわたるILO勧告、836自治体の1232本の決議など、今後の労働運動への貴重な教訓も残した。

団京都支部の闘い

 支部は、団員や事務局員が一丸となって、国鉄闘争に取り組んだ。
 支部は、早期から国鉄労働者の権利問題に係わり、職場に出向いて実態調査や交流集会を積み重ねた。
 事件活動においては、団員で弁護団を結成し、国鉄当局の「人材活用センター」攻撃の中、国労が歴史的な修善寺大会で闘う方針を守り抜く情勢を受けて、仮処分闘争を展開した。そして、福知山支部事件では、宮本平一団員の献身的活動に支えられて全国唯一の全面勝利決定を獲得し、全国に励ましを与えた。国労の村西、長谷川両組合員の採用差別事件では、京都地労委で勝利命令を獲得し、大阪労基局への採用による解決を実現した。新たな「人材活用センター」というべきJRの配属差別に対しては、国労京都支部、国労福知山地本、国労滋賀支部、全動労の各事件の弁護団を担い、次々と勝利命令を獲得した。弁護団は、近畿・西日本・全国レベルの弁護団活動のみならず、北海道や九州の調査活動にも参加した。誰よりも国鉄労働者を愛し、「分割・民営化」への怒りに燃えておられた稲村五男、吉田隆行の両団員が、最高裁和解を見ることなく逝去されたことが本当に残念である。
 支部は、国鉄を守る京都府民の会、国鉄清算事業団闘争勝利をめざす京都共闘会議に結集し、集会や宣伝行動に奮闘するとともに、弾圧・妨害を許さない防衛活動を担った。とりわけ、86年2月28日、アバンティホールにおいて国労京都支部と共催した構成劇「はしれ 俺たちのレール」は大成功となり、参加者に確信と勇気を与えた。

今後の課題
 最高裁和解に関しては、雇用問題が残されている。これは和解条項には明示されておらず、民主・社民・国民新・公明の4党の申入文書(JR各社に200名位の採用を要請し、その他の雇用についても政府は努力する)を政府が受け入れたものである。この雇用問題の解決を1日も早く実現することが必要である。

団員としての課題は、労働委員会制度の再生と判例の克服である
  「分割・民営化」における国労・全動労に対する差別は、これほど判りやすい差別はないというほど露骨極まりないものであり、全国の労働委員会闘争が連戦連勝であったことは、いわば当然であった。しかるに、東京地裁、東京高裁は、幾多の労働委員会命令の重みを否認してJRの使用者性をことごとく否認した。最高裁では、2名の反対意見を獲得したものの、逆転には至らなかった。このような裁判所の状況は、労働委員会制度の否認にも等しいものであって、団員は、一連の判決を厳しく批判し、労働委員会制度の再生をめざす必要がある。他方、最高裁判決多数意見は、JRの使用者性は認めなかったものの、採用差別を「振分け」と規定し、その際に差別があれば不利益扱いになると判示した点において、他事件に活用できる意義があり、現に医療法人青山会事件の東京高裁判決の上告不受理として発現している。最高裁判決に関する詳細については、労働法律旬報の特集号(1729号)に掲載されている片岡昇先生と萬井隆令先生の論文を参照されたい。
 和解は実現したものの、今日まで、65名の原告が解決を見ることなく逝去され、多くの原告が健康を害し、家族を含めて人生設計を奪われた。200名に近い自殺者、心ならずも退職や組合脱退を余儀なくされた無数の国鉄職員、安全軽視の「分割・民営化」がもたらした福知山線事故によって命を奪われた107名と今も後遺障害に苦しむ多数の乗客、「走る福祉」と呼ばれた国鉄を失った地域の疲弊と住民の困難・・「分割・民営化」がもたらした被害はあまりにも甚大である。その責任を徹底的に究明し、国民のための公共鉄道を再生させるまで、「分割・民営化」への闘いに終わりはない。
 JR採用差別事件の和解成立の一方で、2009年12月、日本年金機構の発足に伴い、545名の社会保険庁職員に対する分限免職処分が行われた。労働者の権利を守るべき厚生労働省が、年金問題の責任を職員に押し付けて国民の目をそらすために、JR採用差別と同じ手法を用いて解雇を強行したものであり、許すことの出来ない暴挙である。京都闘争団15名は、地裁での集団訴訟・人事院での審査請求を闘っている。1日も早い職場復帰を実現するために、京都の労働組合、民主団体の大きなご支援をお願いするものである。