中田衛一さん過労死損害賠償請求事件判決報告

弁護士 毛利 崇

 京都地方裁判所(裁判長・大島眞一裁判官)は5月25日、中田衛一さんの死亡は過労死であると訴えた、両親の請求を棄却する不当判決を下しました。
 衛一さんは、1997年に高校を卒業した後、トステムの綾部工場に就職し窓枠製造のライン従事者として働いていました。ところが就職してわずか4年後の2001年6月、夜勤明けに自宅で就寝中に亡くなりました。衛一さんの両親は、衛一さんの死亡の原因が過重な労働にあるとして、会社の責任を追及する訴えを提起し、私は、その弁護団の一員として訴訟手続に関わってきました。
 弁護団は、衛一さんの死亡の原因が過重な労働にあることの根拠として(1)長時間労働が蔓延していたこと(2)深夜交替制勤務が労働者の疲労蓄積を促進すること(3)立ち作業であるライン業務が身体に過重な負担を与えるものであることーなどを主張し、多くの証拠を提出してきました。また、長時間労働については、衛一さんの生活を身近で見ていた両親や、当時のトステムの働かせ方を身をもって体験している同僚が法廷で証言をしました。しかし、裁判所は、これらの証拠や証言を全く無視して、法廷には一度も来ていない、当時の衛一さんの上司が労働時間をメモしていたというノートが信用できるとして、原告の主張する長時間労働を認めませんでした。
 深夜交替制勤務が疲労蓄積を促進するとの主張について、原告は、裏付けとなる医学文献や医師の意見書などを数多く提出しましたが、裁判所は、これらの証拠を判決でほとんど顧みることなく、交替制勤務がスケジュールどおりに実施されている場合には、その負担は日常生活の中でうける負荷と変わらないという、医学の常識に反する判断を行いました。
 立ち作業であるライン業務についても、一定程度負荷のかかる作業であったとしながらも、2時間毎に10分休息がとれていたことなどを根拠にしてそれほど大した負荷ではないと判断しました。この点については、当時20代前半であった同僚が、休憩時間にはとにかく座っていたいと思うほど足に負担がかかり、休みの日には寝ることだけが楽しみだったと法廷で証言をしたにもかかわらず、この証言が判決で考慮されることはありませんでした。
 裁判所は「何故、22歳の若者が死ななければならなかったのか」を解明しようとする姿勢を示すこともなく、結論に不利な証拠は無視し、有利な証拠だけを引用して判断を下すという暴挙を犯しました。
 原告であるご両親はもとより、弁護団としてもこのような不当判決を見過ごすことはできません。今後は大阪高裁で、勝利に向けて闘うことになります。
 本訴訟は、衛一さんの死亡の原因を追及し、企業に責任をとらせるとともに、深夜交替制勤務の健康に与える影響や工場労働者の時間管理のあるべき姿を世に問う訴訟だと思います。また、現在の不十分な労災認定基準に疑義を投げかける訴訟でもあると考えています。過労死は人ごとではないという合い言葉の元に、若者を中心とした「中田ネット」という支援団体ができ運動が若者の間にも広がってきています。ご支援をいただきますよう宜しくお願いいたします。